「ぁあ……」
P.P.Lから外出許可を得て、ほんの少しだけ街に出た。
「もう、そんな時期なんだね」
街中に、年末と新年を祝う飾りが施され、住人たちも楽しそうに往来している。友人同士であろう集団。カップルであろう二人組。親子。家族……。
「……」
幸せに溢れた人の波は、ヴィエンタにとっては悲しみを煽り立てる不快な波。メイたちとああやって過ごせていたら。シルファナたちとああやって過ごせていたら。願ったって頑張ったって叶わなかった。どうして、どうして。
「……どうして」
様々な負の感情が、心の奥底から溢れ出す。かと思うと、薄気味悪く笑みを浮かべて。
「……違う。そうじゃないよね。私がまた、叶えるんだ。皆と、もう一度……」
ふふ、ふふふ、と暗く掠れた声を漏らしながら、ふらりと人々の波から逃げていった。
たった一人で、変わらぬ願いを、今年も抱きながら。